序章 彼女はいつも海を見つめていた。

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その女性は澄み渡るような青色の海が夕焼けによって赤く染まってゆくのを静かに見つめていた。 彼女のいる場所は日本よりはるか南の北マリアナ諸島 連邦サイパン島である。 彼女の名前は美作那波(みまさかななみ)。 まだ少しあどけなさの残る顔をしているが先日26歳の 誕生日を迎えたばかりであった。 彼女は1週間ほど前にサイパン島に旅行に来ていて 毎日ここオレアイビーチにある小さなカフェに来ていた。 そして、ロイヤルミルクティーの入っているカップに上品に口をつけては少し寂しそうな表情でいつも海を 眺めていた。 そんな彼女をカウンターごしに優しげな眼差しでみつめている若者がいた。 彼の名は海堂深。サイパン生活1年生の夢と希望に満ちた情熱を内に秘めている24歳の男の子である。
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