prologue

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   あれを初めて見たのは物心のついた頃、多分3歳か4歳ぐらいだ。  王都はずれの飲み屋街。そこに僕の両親が営む小さな酒場がある。  ある日、酒場の目の前の通りでふと見上げた空。そこに彼等はいた。  通りに射し込む太陽の光を遮るように、大空を優雅に羽ばたく翼竜の隊列。  澄みきった青空と、燦々と降り注ぐ日の光に照らされた銀色の翼竜は、まるでこの世の生き物だとは思えないほどに美しく、逞しく、雄々しく…。  僕は子供ながら、その圧倒的な存在感に説明しようの無い高揚と衝撃を受けたことを鮮明に覚えている。  銀色の翼竜を自在に操り空を翔る宮廷竜魔導士。  当時の僕は彼等が国で随一の有力貴族だとか、選び抜かれた国内魔導士の最高峰だなんてことは知るよしも無く、ただただ漠然とした憧れを抱いていた。 ――宮廷竜魔導士になる!  初めてこれを両親に告げたのは王立中等学校の卒業を間近に控えた15歳の冬のことだ。  普通、平民が行く必要の無い王立魔法学校を卒業し、尚且つ国の定めた超難関試験を幾つも突破しなければ宮廷竜魔導士は愚か、宮廷直属の魔導士になることすら出来ないまるでおとぎ話。  両親は僕の言葉を単なる子供の夢物語と捉え、相手にすらしてはくれなかった…。
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