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朝、冬の寒さが未だ残る王都北西部。
王都中心部へ続くこの街のメインストリート沿いに魔法学校の寮が建ち並ぶ。
寮棟最西棟の最も陽当たりの悪い一階角部屋。
実力主義の王立魔法学校に於いて、僕に与えられたこの部屋は痛いほどに僕の現在の立ち位置を教えてくれる。
ヨシッ!と自らを奮い立たせるように一言掛け声を発し、僕はなんとかベッドから底冷えのする部屋へと這い出した。
歩くたびに軋む床と開閉の度に耳障りな悲鳴をあげる立て付けの悪い扉。
狭く薄暗い部屋に申し訳程度にぽつん置かれた簡素な一人用のテーブルの上に、バターを塗っただけのパンと、特売で買った安物の豆で煎れた珈琲を置くと思わずため息が溢れた。
パンをかじっては渋いだけの珈琲で流し込む朝食。
これを半ば作業のように数分で片付けると、寝癖を押さえつけながら壁にかけられたローブを羽織る。
手櫛だけで寝癖が治る生まれつきの猫毛に感謝しつつ、僕は足早に寮を後にした。
人通りがまばらな表通り。
まだ薄暗いその通りを歩きながら、ローブのフードを深くかぶり直す。
落ちこぼれを表す漆黒のローブが、元より沈んだ僕の気持ちをより一層深くに押し込んでいった。
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