dropout

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   履き古した革製のブーツと通りに敷かれた石畳がコツコツと小気味良い音を奏でる。  まだ朝日すら差さない早朝の通りには、市場に向かう荷馬車や開店の準備を始めた通り沿いの商店の店主ぐらいしか人影は見受けられない。  …見慣れた毎朝の風景だ。  両親の反対を強引に押しきり進学した魔法学校。  王都の南に位置する実家の酒場は通学するには些か遠く、両親は渋々寮を借りてくれた。  本来平民が行く必要の無い魔法学校の学費は、寮賃を差し引いても平民の稼ぎから考えると吐き気をもよおすほど高く、お陰で親父は酒場の営業時間を伸ばし、母は朝、市場での仕事も兼業するようになった。 ――ハルは勉強に集中しなさい。  進学を許してくれた後の母は意外なほど優しかった。  勉強しながら働くと言う僕の申し出を断り、勉強だけに集中させようとする母の姿からは強い決意と覚悟を感じ、僕はそれに甘える他無かった。 ――…だからこそ。  入学して直ぐに思い知らされた貴族連中との埋めようのない差。  潜在的な能力の違いや血統。  越えようのない壁を目の当たりにしても尚、今までなんとか諦めずに来れたのは、あの日の母の言葉が大きく影響しているだろう。  学校への道すがら。  僕はそんなことを思い返して、陰鬱な気持ちを無理矢理吹き飛ばす。  気付けば通りの先に、ようやく魔法学校の姿が見えてきていた。
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