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眼前に聳える魔法学校の校舎は見慣れた僕でも尻込みしてしまうほどだ。
校舎と学校所有地を囲む石造りの防壁と、雲を刺すような校舎塔。
王国のシンボルでもある王居住の城"アルテミア城"、通称"白亜の城"に並ぶ王国の巨大建造物がこの"王立魔法学校アバドン"の校舎、通称"城下の要塞"である。
有事の際には国王城を護る最期の砦としても機能するこの校舎は、事実、百余年前に起こった先の戦争、北の大国、"ラグネイ皇国"との大戦に於いても皇国軍の侵入を頑なに守り、停戦へと導いた実績をもつ。
その分厚い防壁をくりぬくような形で造られた鉄製の正門を潜ると、折り返しの激しい石造りの階段がある。
これを登りきってようやく校舎へと辿り着くのだが、毎朝のことながらこれにはかなり骨を折る。
――キィィィイン。
階段を登りきり、ようやく校庭とも呼べる広場に着いた頃、広場のあちこちから金属音にも似た澄んだ高い音が木霊してきた。
これは中級魔法"転移"を行使した際に起こる現象だ。
魔力量の多い一部の有力貴族は、寮から転移で登校してくる。
中には王都以外の街にある屋敷から直接転移してくる者もいるくらいだ。
恐らく僕がこれをすると、登校早々に魔力欠乏症で医務室送りになるだろう。
慣れた光景ながらも、それは僕に改めてその実力差を思い知らせるには充分過ぎる光景であった。
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