哀れな奴 Ⅳ

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頬に触れたのは血で生温い刃物。プツリと音をたて裂かれる。その流れ出る血を確かめる様にセリアは手袋を取り触れる。傷を広げ刺激すると、痛みが増し更に出血する。 リュオン『……何なんだよ…』 セリア「痛いですか?」 ピタリと止まる手。 何を当たり前の事を言っているのか…下っ腹刺されて顔切られて広げられ<痛くない>と答える奴が何処にいる。 だがセリアは何か変だった。 離れ様とした手に俺様は思いっきり噛み付いた。普通なら悲鳴の一つや二つ、顔が歪む筈。 セリア「……」 ヤツは違った。 肉が裂け骨が砕ける音がするのにも関わらず顔色一つ変えない。ただ成されるがままに…… まさかコイツは痛みを感じないのだろうか。 俺様は更に力を強め、中指から小指までの部分を噛みちぎった。 ドクドクと流れ出る血。 暫くその様を見続け、クスリと笑う。まるで悪魔の様な笑み… セリア「……こうされたら人は痛みを感じるのでしょうね。全く、人は弱い」 リュオン『がっ!!!?』 ─グリュッ 下っ腹に出来た傷口にもう片方の手が入り更に広げられる。奥へ奥へと進む手。 俺様は咳き込み吐血する。 セリア「精霊と言っても所詮は人の形をした物。脆く儚いッ」 リュオン『ぐっああ゙!!!!』 そのまま貫通した。 肘の辺りまで俺様の体内に入っている腕。 コイツは痛みを感じないのだと俺様はその時確信した。 リュオン『哀れ、だ…なッ……』 セリア「だから何です? 哀れだと思うのなら勝手に哀れめば良い…俺は他人がどう思おうが関係無い… 戯れ言に付き合っている暇は無い」 リュオン『戯れ言…ねぇ。 可哀想なヤツ、だな…ック………そんでアンタは…幸せ、か?』 セリア「……黙れ」 ──ズリュッ リュオン『あ゙あ゙ああぁッ……はっ…ぐぁ、はぁ…ぐッ』 横に裂かれた。 腕は体内から出たが、腸と言った臓器は丸見え。痛いってもんじゃねぇ… セリア「興醒めです」 リュオン『……』 血がベットリと付いた腕を降りビチャビチャと床に飛び散る。セリアはそのまま部屋を出ていった。 そして俺様は重い瞼を閉じた…── *** 数日後、俺様の傷は癒えた。 何故かあの後セリアは俺様を解放し、気付けば水無月の家に居た。 リュオン『忘れられねぇ…』 あの緑色の瞳、声… 哀れな奴。 力があるのに賢いのに普通には到底なれない孤独を抱えるアイツ。 俺様も馬鹿だ。 アイツを恨む事なんて出来やしない、抱きたくて堪らない。 だから言っただろ? 猫は毎日発情期なんだよって(笑) END→
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