89人が本棚に入れています
本棚に追加
頬に触れたのは血で生温い刃物。プツリと音をたて裂かれる。その流れ出る血を確かめる様にセリアは手袋を取り触れる。傷を広げ刺激すると、痛みが増し更に出血する。
リュオン『……何なんだよ…』
セリア「痛いですか?」
ピタリと止まる手。
何を当たり前の事を言っているのか…下っ腹刺されて顔切られて広げられ<痛くない>と答える奴が何処にいる。
だがセリアは何か変だった。
離れ様とした手に俺様は思いっきり噛み付いた。普通なら悲鳴の一つや二つ、顔が歪む筈。
セリア「……」
ヤツは違った。
肉が裂け骨が砕ける音がするのにも関わらず顔色一つ変えない。ただ成されるがままに……
まさかコイツは痛みを感じないのだろうか。
俺様は更に力を強め、中指から小指までの部分を噛みちぎった。
ドクドクと流れ出る血。
暫くその様を見続け、クスリと笑う。まるで悪魔の様な笑み…
セリア「……こうされたら人は痛みを感じるのでしょうね。全く、人は弱い」
リュオン『がっ!!!?』
─グリュッ
下っ腹に出来た傷口にもう片方の手が入り更に広げられる。奥へ奥へと進む手。
俺様は咳き込み吐血する。
セリア「精霊と言っても所詮は人の形をした物。脆く儚いッ」
リュオン『ぐっああ゙!!!!』
そのまま貫通した。
肘の辺りまで俺様の体内に入っている腕。
コイツは痛みを感じないのだと俺様はその時確信した。
リュオン『哀れ、だ…なッ……』
セリア「だから何です?
哀れだと思うのなら勝手に哀れめば良い…俺は他人がどう思おうが関係無い…
戯れ言に付き合っている暇は無い」
リュオン『戯れ言…ねぇ。
可哀想なヤツ、だな…ック………そんでアンタは…幸せ、か?』
セリア「……黙れ」
──ズリュッ
リュオン『あ゙あ゙ああぁッ……はっ…ぐぁ、はぁ…ぐッ』
横に裂かれた。
腕は体内から出たが、腸と言った臓器は丸見え。痛いってもんじゃねぇ…
セリア「興醒めです」
リュオン『……』
血がベットリと付いた腕を降りビチャビチャと床に飛び散る。セリアはそのまま部屋を出ていった。
そして俺様は重い瞼を閉じた…──
***
数日後、俺様の傷は癒えた。
何故かあの後セリアは俺様を解放し、気付けば水無月の家に居た。
リュオン『忘れられねぇ…』
あの緑色の瞳、声…
哀れな奴。
力があるのに賢いのに普通には到底なれない孤独を抱えるアイツ。
俺様も馬鹿だ。
アイツを恨む事なんて出来やしない、抱きたくて堪らない。
だから言っただろ?
猫は毎日発情期なんだよって(笑)
END→
最初のコメントを投稿しよう!