Une main de l'aide

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「それ、は……」  確かに、なぜ殺さなかったのだろうと思う。が、しかし答えはわからない。  考える余裕など与えないように、にこるの真っ直ぐな瞳はリコリスをいぬいたままだ。  ちぎれるような思いと、熱くなる目頭。そして吐きそうなほどの緊張感のなか、ふと、にこるが微笑んだ。  リコリスとであったときに見せた、無垢な笑顔。であったときのみではない。にこるがリコリスに向け続けた、屈託のない笑顔。 「それはあなたが化け物ではないから」 「……っ」 「ほら。あなたは化け物なんかじゃないでしょ?」  にっこりと、優しく笑った。  その笑みが眩しく感じて、リコリスは自分の中の何かが溢れるのをどこかで感じ取った。  にこるはリコリスを見て見逃してしまうほどのほんの一瞬だけ驚いたが、リコリスが確認するより早く、にこるはリコリスから退いた。  リコリスも起き上がる。座ったままの彼女は、屈託のない笑顔を浮かべたまま、両手を広げた。 「よく我慢したね」  子供をあやすような口調だったが、リコリスはなぜだか嬉しかった。初めて自分が人間扱いされた気がしたのだ。  広げられた両手の意味がわからずに座ったままでいると、にこるはそっとリコリスを抱きしめた。 「もしもこの先、あなたを化け物だなんて言う人間がいるのなら、わたしがそれを否定してあげる」 「……はい」  いつの間にか、返事がこぼれた。それは軍にいた時代、建前だけで使っていた上司への敬語などではない。 「大好きよ、リコリス」  
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