Une main de l'aide

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 リコリスは、火の海の中で剣を振るいながら、どうして自分は今殺しているのか考えていた。  彼女、“にこる”と旅を始めて1ヶ月たった。  “紅い死神”の噂は国内どころか国外にまでとどろいている。旅の先々でリコリスを見て悲鳴を上げるものがいるなか、にこるはリコリスに笑顔を向け続ける。  恐れられるリコリスとは正反対に、にこるは初対面の人にも打ち解け、リコリスを警戒する人間の警戒心を上手に解いていった。  にこるについてわかったことがいくつかある。  にこるは剣を召喚して使う。であったときのどこにでもいる町娘のような姿や、温和な性格からは想像できないほどいい腕をしている。  魔人であり死神とも言われたリコリスが思うくらいなのだから、その腕は確かなのだろう。  しかし、彼女の剣は、殺さない。彼女は決して殺しはしない。  どんな理由があろうと、人を殺すことを彼女はしない。  リコリスと旅をすることになったときも、ひとつだけの約束と称して殺しはしないと誓わされた。  “奪う剣”ではなく、“守る剣”。彼女はそれを徹底している。  それから、であったときの町娘の格好はどうやら目立たないように選んだだけのようで、普段は見たこともない装束に身を包んでいる。  そして当然のように、かなりのお人好しだ。  だが、なぜだか彼女は戦争に敗北し物騒で内乱や殺しの耐えない世間を渡るのがうまい。  
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