Une main de l'aide

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「……リコリス」 「退け。退かぬのならお前も消すのみだ」  そう言ってリコリスは構えた。自分に名前をくれた彼女に、剣を向ける。  するとにこるは俯いた。 「どうしても、この人を殺すというの」  リコリスは頷いた。 「なぜ?」  哀しげに震える声。  リコリスはその声が鬱陶しくてたまらなかった。 「敵だからだ」  にこるが、顔をあげる。  その瞳にはひとかけらの迷いもない。 「そう。なら、あなたと戦うわ。勘違いしないで。死ぬための戦いじゃない。あなたを取り戻すための戦いよ」  ようやくにこるが構えた。 「あなたも早くお逃げなさい。わたしもリコリス相手じゃあなたをかばいきる自信がないわ」  背後の男へ声をかけると、男は苦しげにうめきながら立ち上がった。  よろめきながらも、立つ。が、ちょっとちいさな力で押せばそれだけで倒れてしまいそうなほど、男はボロボロだった。 「戦うのか」 「うん」 「……無駄だ。あれに勝てると思ってるのか」 「勝つんじゃない」 「……」 「リコリスを、とめるの」  互いに剣を向け合う。  リコリスは、黒いなにかに押しつぶされそうになる心を必死に振り払おうとしていた。  こうして、彼女に剣を向けることが辛いのだと、リコリスは思いたくなかったのだ。 辛くなどない。あるわけないのだ。今まで幾度となくたくさんの命を葬り去ってきた。  にこると過ごしたこの一ヶ月はただの夢だったのだと、言い聞かせる。自分は本来、こういう場所に立ってこういうことをするだけに生まれてきたものなのだと。  
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