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「あなたは、化け物なんかじゃないの」
その言葉は、重く閉ざされていた、心のおくのおくまで響いた。否、響くどころではなかった。揺さぶられた。大地震のように、心が大きく揺さぶられた。
これまで旅をしてきた日数は、決して長いとはいえない。けれど、その中でにこるはなんども、鉄どころか鋼でできているようなリコリスの心を揺さぶってきた。
彼女にとっては、なんてことない、本心なのだろうけど。けれど、その言葉は確実にリコリスの“心”を集めていった。
今の言葉は、今までとは比にならないほどリコリスの胸を熱くさせた。
「あなたは間違えてしまっただけ。強い力の使い方を間違えてしまっただけなのよ」
目の前の少女から、目がはなせない。
「あなたが殺して、奪ってきたもの、その行為を、わたしは決して許したりはしない」
目頭が熱くなった。
許されないのだと。
だが、そこで自分が今までしたこと。たった今まで殺そうとしていた男を想う。
――当然か
そう思うことすら痛くて、やめてしまいたかった。けれど、リコリスをまっすぐ見つめてくる瞳は、やめることを許したりはしなかった。
「でも、責めないわ。絶対に責めたりしない。ねぇ、どうしてあの男を殺さなかったの? あなたなら、瞬殺だってできたはずよ」
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