後編

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沙里奈は屋上へ行かなくなった。 6月になって、沙里奈は体調を崩す日が出てきた。 「さり、俺毎日来るよ。・・・真狸がさりについててやってくれって。」 「俺も、そうしたかったから、良かった。こういう時はやっぱりさり優先。」 「・・・さりが好きだ。今更だけど・・・。」 圭汰からの2度目の告白。しかし、沙里奈にそれを受けることはできなかった。 「ごめんね・・・。私もけーたが好き・・・。」 もう・・・あと2ヶ月。 圭汰と会話できるのも・・・。洋介に会えるのも・・・。 「よーくん・・・屋上に行かなくちゃ・・・。」 「さり!?ダメだよ!寝てなくちゃ・・・。」 でも、沙里奈は聞かない。 「本当に動けなくなる前に行かなくちゃ!!」 「あーもう!俺も行くから。」 沙里奈は圭汰の手を借り、屋上へ向かった。 洋介に会いに。謝らなくちゃいけない。あの時の洋介の気持ち、分かったから。 「よーくんっ!!」 屋上につくなり、沙里奈は叫ぶ。 「・・・さり?!退院したんじゃ??・・・来てくれたんだな。」 「特等席」から顔を出す洋介。一瞬驚いたが、沙里奈の顔を見て、ほほえんだ。 1ヶ月前と変わらない・・・。無邪気な笑顔で、迎えてくれた。 「よーくん・・・。ごめん。ごめんね・・・。」 沙里奈はとにかく謝った。 「さり、いいよ・・・。なんかあの日は俺も変にイライラしてたし。悪い。」 「さりが来なくなって・・・反省してた。・・・こいつは?」 洋介は圭汰を睨む。 「あ、けーたっていうの。幼なじみで・・・。」 「ここまで連れてきてくれたの・・・私一人じゃもうココに来れなくて。」 体調を崩すにつれ、食欲がなくなってきた沙里奈は、完全に衰弱していた。 「もう・・・歩けなくなっちゃうの。私ね、来月・・・死んじゃうの。」 洋介は信じられなかった。 あの時・・・自分に言った「楽しく生きよう」の意味。 それは洋介に言っただけでなく、沙里奈自身そう思っていたことが分かった。 「俺・・・知らなくて・・・。そんな・・・うそ・・・だ。」 洋介は動揺した。沙里奈が死ぬ。自分より先に。 もう・・・歩けなくもなる。自分に会いに来てくれなくなる。 「・・・歩けなくても!!俺が会いに行く!!」 沙里奈に会うには、自分がそうしなければならない。 「俺・・・沙里奈が好きだ。だから、会いに行く。」 沙里奈は笑って、ありがとう・・・そうつぶやいた。
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