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「でも撮る写真は面白いのな。だから探してたんだ。あんたのコト」
「…写真?」
うん、と頷いて、男は私のカバンから頭を覗かせる携帯を指差した。
「待ち受けのソレ、あんたが撮ったんだろ?保存してあるカメラ画像も見ちゃった」
「…あれ、が?」
面白い?
流されるままに街を泳ぐ日々。
時折、気紛れに撮る写メ。
何となく待ち受けに設定した、道端の花の写真。
「…面白いって…どんな風に?」
足を止め、私は男を見上げた。
初めて男と視線を合わせた気がした。
「コレ見て」
にこにこと笑いながら、男が懐から数枚の写真を取り出す。
私は目を見開いた。
「…キレイ」
小さな四角い印画紙に広がるのは、空も人も建物も強い光を放つ、原色の世界。
「あんたが撮った街と同じ街なんだぜ?」
いつの間に抜き取ったのか、男が私の携帯に納まった写真を隣に並べる。
「…ホントだ」
同じ建物、同じ景色。
けれどとてもそうは思えない程、切り取られたそれぞれは別の世界に見えて。
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