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「はぁ、はぁっ……」
必死の思いでトイレの個室に飛び込んだ。
「はぁっ……、
う……」
――林先生、
ケッコンするんですって。
――へぇ、それはおめでたい。
――なんでも、
10歳年下らしいですよ。
――…………
「う……ひッく……」
僕の右手の薬指に細い指輪。
林先生がくれた指輪。
零れた涙が伝う。
左手に付けてくれないのを不思議には思った。
本物のためにとっておきなさい。
そう言ってくれたのに…
相手は林先生じゃなかった?
はやく気づいていればよかった?
「っ………先生っ…
先生っ……」
――ショウヘイと読むのかい?
――あ、マサヒラです、
鈴木将平。
――そうか。
これからよろしくな。
――は、はいっ…………………
「ッう―――っ………」
ただあふれてとまらない。
どうしたいのか、と言われ、それはずっと林先生のそばに居れれば、と思うのだが。
彼は、僕を見ていなかったのだろうか?
林先生と付き合いはじめてまだ1年。
ケッコンする女性がいたなら、断ってくれてよかった。
思いは通じあっているものと、勘違いしていた。
――私と、かい?
――はいっ、
ずっとっ、す、好きでっ
――はは、若いっていいな。
――そんな、
林先生だってまだ若い…
24だ。
こんな夢中になれたのは林先生だけなのに。
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