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「あの隊士の後を追え。ただし見つかると厄介だ、距離を置いて行け。」
「でも─」
「いいから行けっ!!ちゃんと断ち切ってこい、じゃないと切腹だ。」
偉そうに言ってるけど、土方さんの瞳には優しさがある…。だからかな、頬が緩んで仕方ないの。
「はい!!」
元気よく返事をすると、隊士が走った方向へ足を踏み出す。本当は断ち切るなんて無理だし、新撰組の不利に動こうとしてるけど─
今は前を向いて走るしかない。
そう自分に言い聞かせて私はただまっすぐに走った。
───
「土方さん、行かせて良かったんですか?土佐の連中も狙ってるのに、殺れる時に殺っとかなきゃ─」
「総司、あいつは必ず断ち切ってくるさ。 フッ、鬼と本気の喧嘩出来るのは鬼だけか、だからって本気で殴らなくてもいいのにな…。」
愛が走って行った方角を2人はじっと見つめていた。けれどすぐに土方は目を逸らし、血が固まりかけている遺骸に目を向ける。
「しかし愛ちゃんが人斬り以蔵と繋がってるとは思えないけど。…もし愛ちゃんが斬られたりしたら、その時は僕が」
「分かってるさ、でもあいつは斬られない。なんせ鬼の副長を殴る鬼の女だからな。」
「楽しそうですね?ま、土方さんを殴れる人はそういないですもんね。見ているこっちが楽しかった。」
「おい、それはどういう意味だ?」
バチバチと睨み合う土方と沖田。愛が見えなくなってからも、その2人の言い合いは暫く続いたのでした。
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