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あれから暫く走った所に、壊れかけの小屋があった。その小屋の中に隊士は小声で声をかけてからさっと中に入る。……きっとあそこに隠れているんだろうな。
「愛殿か?久しぶりじゃのー!!」
「っ坂本さん!?しーっ!!」
いきなり背後から声をかけてきたのは、坂本さんだった。やたらフレンドリーに話しかけてくれたけど、タイミングが悪すぎる…。
「…ん?何かあったがか?」
私の小声につられてか、坂本さんは小声で私に尋ねながらゆっくりと横に座った。けれど私の返事を聞く前に、彼はまた口を開く。
「わしはのぅ、以蔵を探しとるんじゃ。新撰組に追われとるて聞いたからのぅ。」
………もう情報が回ってるんだ。
「私も…以蔵さんを探してるんです。このあたりにいるはずなんですけどね…。」
坂本さんには言っていいだろうと思い、小屋に新撰組が隠れていることを告げる。…すると坂本さんは優しい表情でゆっくりと口を開いた。
「愛殿は…以蔵に惚れたがか?」
「………はい?どうしてそうなるんです?」
全く想像もしなかった言葉に、思わず苦笑いが浮かぶ。けれど坂本さんは真面目な口調で、話を続けた。
「好きでもない者を命かけて助けるなんて普通は出来んこと。それに愛殿からは“愛”を感じるぜよ、優しい、温かい愛がの。」
────“愛”
「わしは争いなんかよりも『愛』が好きじゃ。…愛は人の心を変えるからの。」
まるで心が変わった人がいるかのように話す坂本さん。でもその人について尋ねる前に、事は動き出した。
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