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「私は遠慮したいかな?でも今は皆外に出てると思うよ…。」
今この屯所に幹部は土方さんを除いてそういないはず。私はそう思っていた─
「それがおるらしいで?確か…原田さんと永倉さんが。」
──“原田さん”
「何か原田さんの隊士が怪我したとかで撤退せざるを得ない状況だったとか。で、その人らを永倉さんの隊士が運んで帰ってるらしい。」
─ズキッ
…駄目だ、泣いちゃ駄目だ
「愛?どうかしたんか?」
「あ、ううん!!何でもないよ。…やっぱり私も行っていい?」
私は必死で笑顔を作ると、2人は快く了承してくれた。……原田さんが私の顔を見た確率は低い だから確認する必要はないと思う。ただ…どのような怪我なのか見たい、そう ただそれだけ。
私は一度深呼吸をしてから2人の後をついていった。
──
─────
「永倉さん、よくご無事で。」
「あぁお雪さん!!俺は大丈夫なんだが……左之の隊士達がな…。」
部屋に入るとどんよりとした空気が私達の足を重く…重くなったのは私だけだった。
「こんな大変な時にこんな提案をするのは気が引けますが─」
近くでお雪さんとお梅ちゃんが永倉さんにまるで皆のためだというかのように話している声が、ゆっくりと遠ざかっていく気がした─
「愛ちゃん大丈夫か?」
「……原田さん。」
体に何か重いものがまとわりつく感覚が、原田さんの声から逃げるように消えた。けれど私は逃げることは出来ない…。
「怪我 大丈夫ですか?」
「あぁ…俺は大丈夫なんだけどな。隊士達は骨が折れてるらしい。」
「そうですか…。」
聞くんじゃなかった…
いや 来るんじゃなかった…かな。
数人の隊士の苦しそうなうめき声が嫌でも耳に入る。斬られた人や血だらけの人は割りと平気で見れたのに、隊士さんが苦しむところは見てられないなんて 最悪だな私…。
「あの…原田さん─」
「あぁあ!んなかっこわりーとこ女に見られるとは、情けねえな。…本当はさ、土方さんに泳がせろと言われてたんだ。なのに、こいつらをちゃんと止めてやることが出来なかった…、全ては俺の責任だ。」
原田さんの視線は苦しむ隊士達に向けられている。本当に申し訳ないという目…。
…以蔵さんと別れる時、踏ん切ったはずなのに 何度も悩む自分が嫌になる。
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