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「あの!お茶を持って来たので……えと、一緒に飲みませんか?」
永倉さん達にお茶を渡した後、原田さんが言った人物にお茶を持ってきていた。でも閉めきられた障子の向こうからは、声一つしない。
「あのー………山南さん?」
部屋にいるって聞いたんだけど…。さては私、嫌われてる?ははっ、私ってば被害妄想炸裂だ!
「いないってこと─」
「しつこいですね、入りたければ入ればいいじゃないですか!!」
…………前言撤回、やっぱり嫌われてる?
「えっと…じゃあ失礼しまーす。」
ビクビクしながらも、私はゆっくりと障子に手をかけた。部屋の中は薄暗く西日が怪しく山南さんを照らし出している。
しかも障子を開けた先にいた彼は、私の知ってる彼ではない。普段の優しい色を浮かべた瞳ではなく、逆に激しい憎悪の色が見えた。
「…どうしました?まるで“化け物”でも見たかのような顔ですね。あぁそうか、私はこの新撰組の厄介な化け物─」
「山南さんは化け物なんかじゃない!!……どうしてそんな悲しいことを…。」
お盆の上のお茶が激しく揺れる。その揺れ以上に私の心が悲しく揺れ動いた。
「あなたは知らないだけだ。動き続けるこの新撰組で、過去を見続ける私は厄介者なんです!!厄介者なんですよ…。」
不意に山南さんの目から涙が溢れた。溢れた涙は彼の着ている布地に染みを作る。
何がこんなにも彼を苦しめているのだろうか─
でも本当は分かってる。私の知ってる通りなら近藤さんと土方さんとの意見の食い違いからの亀裂…、私はこの亀裂を埋めることが出来るのだろうか。
「とりあえずお茶冷めないうちに飲みましょ。……部屋、汚いですね。」
「……はっきり言いますね。全てが嫌になるとこうなるんですよ。」
自虐的に笑いながらお茶に口をつける山南さんに、私はわざと大きなため息をついてみせた。
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