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とりあえず誰に会うことなく台所まで来ることが出来た。
「……お夏さん達どこ行ったんだろ? まぁいいか、一人考えるにはちょうどいいし。」
私はお盆を置くと、入り口の柱に寄りかかりしゃがみこんだ。
一度、整理しておく必要がある。山南さんのことに伊東さんのこと…、私に何が出来るのだろうか。
…その2つについて考えなきゃいけないのに、ふと現代にいる人達のことが頭を過った。今思えば新撰組を助けることだけ考えて生きてるけど、向こうにいる両親や友達は元気に暮らしてるのかな?
「……考えても仕方ない、よね。今は私の出来ることをしなきゃ、そうしたらきっと帰れると思うし!」
「どこに帰るんだね?」
…………え?
「こんな寒いところにいては、風邪をひいてしまうよ。それに雪原君がいないと歳が心配していたぞ?」
ふわりと私の肩に羽織をかけてくれたのは、近藤さんだった。……いつからいたのかな?
「ありがとう、ございます。でも近藤さんがどうしてここに?」
「君にこれを渡そうと思ってね。貰い物なんだが、いつも頑張ってくれている君にあげたくてね。」
「……金平糖、ですか?」
私の手にのせてくれた少し重い袋の中には、色鮮やかな金平糖が入っていた。
「あぁ、部屋ででも食べるといい。」
「ありがとうございます。でもこんなに沢山貰っちゃっていいんですか?近藤さんも一緒に食べましょうよ!」
私はそっと袋の中から小さな結晶とも言える、金平糖を手のひらに掬い近藤さんに差し出す。彼は少し考えてから、受け取ってくれた。
「君は優しいね。また何か菓子を貰ったら、君にあげよう。」
それだけ残すと近藤さんは広間の方へ去っていった。
近藤さんがいなくなった台所は、どこか暗く感じる…。それに彼がくる直前に感じた不安がいつの間にか消えていた。
「……近藤さん、やっぱりあなたには敵わないなぁ。」
私は金平糖を一粒つまみ上げ、口へと運ぶ。優しい甘さが広がった。
私はこれを山南さんに分けてあげようと思ったが、沖田さんの羽織のことを思いだしてしまい、少し気は重いが沖田さんの所へ行くことにした。
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