すれ違い

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「斎藤さん!!」 あなたは救世主だっ!!! 私は後ろにいる斎藤さんに抱きつきたい衝動を必死に堪えた。そんなことを知らない当の本人は、優しい笑顔を浮かべている。 ……こんなにも3人ともが違う笑顔を浮かべるなんて、現代にいた頃は想像すらしなかったな。 しみじみとそんなことを考えていると、平助君の病んでいた瞳に光が入った。 「なんてね、びっくりした?あれは冗談だって、冗談。」 「へぇ。でも僕はもう一人の平助の方がいいな、面白いから。…でもきっとまた会えるだろうね。」 再び無邪気に笑う平助君に、爽やかに笑いかける沖田さん。でも今はその無邪気さや爽やかさが、逆に怖く感じる。しかも沖田さん意味深な発言してるし! 「雪原……これ。」 不意に斎藤さんが私の目の前にお盆を差し出す。どこから出てきたのか分からないその上には、何か湯気を発するものが… 「おにぎり…ですよね、これ。」 その湯気の正体は、綺麗な梅の花を描いたお皿にのった沢山のおにぎりだった。いや…おにぎりというより、塊? 「そうだ。局長が雪原が何も食べてないと言っていたから。」 「え、もしかしてこれ…斎藤さんが?」 私の言葉にどこか恥ずかしそうに頬を赤く染める斎藤さん。思わず私はもう一度おにぎりに目を向けた。 …………うん。斎藤さんには悪いけど、丸い塊にしか見えない。いや、おにぎりだから塊でいいのか?……いやいや、これはないだろ!! 「……食ってくれるか?」 「え!!?  あ…はい。」 卑怯だ!!そんな悲しそうな目をして言われたら“はい”しか言えないって。 ……でも、斎藤さんが一生懸命作ってくれたものに違いはないんだし、何より私のために作ってくれたってことが凄く嬉しい。だから…… 「……いただきます。」 私は一番上にあるおにぎりへと手を伸ばした。
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