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「…んなの認めない。」
平助君の声が聞こえたかと思った瞬間──
「ああっ!!?私が食べるって言ったのに!!」
皿に戻したはずのおにぎりがいつの間にか平助君の手の内にあり、しかも既に食べられ始めている。
「“共犯”って前言ったこと忘れた?…それとも一君のおにぎりだから?」
─シャリ
おにぎりではあり得ないような音が平助君の口元から聞こえ、斎藤さんのおにぎりがますます分からなくなってくる…。
それでも表情を変えずただじっと私の瞳を見つめてくる平助君が、また“病んでる”ことに気づくのに時間はかからなかった─
「私は平助君のことも斎藤さんのことも、勿論沖田さんのことも考えて─」
「やっぱり愛ちゃん絡まなきゃ出てこないんだね。でも僕もさっきの君の言葉は嫌がらせにしか思えないかな。」
黙って聞いていた沖田さんが不意にまた話に入ってきた。しかもおにぎり食べてるし…
「食べないんじゃなかったんですか?」
「食べるよ、むかつくから。」
よく分からない返事に頭が痛くなりそうで、あえて深く聞かないことにする。
……しかし何か結局2人ともおにぎり食べてるし、私の出した助け船 消息不明だな。
思わずため息が漏れる私の隣で、不意に斎藤さんが小さな声を漏らした。
「喜んで貰えて良かった。」
「斎藤さんの優しさが詰まってますからね。」
でもこの2人は喜んではいないと思うけど……
「私も嬉しい、皆が変わらずにいてくれることが。それに雪原がいてくれることが─」
「え?何か言いました?」
隣でぼそぼそと何か呟く斎藤さんの声が小さくて、何を言っているか聞き取れなかった。
でも斎藤さんはむしろ楽しそうに笑い、何でもないと言って私の髪を優しく撫でる。
そのくすぐったい感覚に少しだけ私も笑いながら、このまま何も変わらなければいいのに…と願うのだった。
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