狂い始めた歴史

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~岡田以蔵視点~ ──チャキ 金属の擦れる音と共に出る刀。 この刀でもう何人の人間を斬ったか分からない…いや、分かりたくない。 「わしはこれからどうなるのかのぅ。」 薄暗い部屋でもう何度も呟いている頼りない言葉に、気分が余計沈んでいく。ここ数日、こんな日々が続いていた。 「……早く龍馬、帰ってこんかのぅ。」 あれから年も明けて、龍馬の助けもあり今はまだ誰にも見つかることなく生きている……でも─ 「愛殿に会えないというのは、やはり寂しいの…。」 愛殿の顔が脳裏に浮かぶと、まるで心にぽっかりと穴が開いたようで涙が溢れた。 情けないと龍馬に笑われそうだが、これだけはどうしても止められない…。 「以蔵ー、帰ってきたぜよ!! 今日はお前の好きな団子が… 何故泣いてる!?」 「め 目に埃が入ったき ……わし、少し外に出てくる。」 まさかこんな時に帰ってくるなんて…。 わしは刀を鞘に戻すと顔を見せないように笠を被る。ふと脳裏にまた愛殿の顔が浮かんだ。 「……もし愛殿に会いに行くなら止めとけ、失敗すれば愛殿が泣くぜよ。」 龍馬は優しくわしの肩に手をかけ、食えと団子を差し出してくれる。…わしだって龍馬や愛殿に心配はかけたくない。 ────でも… 「わしは外の空気を吸うだけぜよ。」 ───すまん、龍馬。 「日が沈むまでには帰ってくるき。」 愛殿に一目でいいから会いたい。 わしは龍馬の返事を待たずに飛び出すと、人気のない道を振り返ることなく進んだ。 ──愛殿のために使うと決めたこの命、そう簡単に手放したりはしない そう強く自分に言い聞かせた時、わしは少し広い通りに出てきていた。 「…あれは、新撰組!?」 少し先に見覚えある羽織を着た男達がいる。どうやら新撰組の屯所近くに出てきてしまったようだ。 そしてわしの後方にも新撰組が… 「……まだ気づかれてない。」 一瞬乱れた心を落ち着かせ、笠を深く被るとわしはまた歩き始める。
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