狂い始めた歴史

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~謎の少女視点~ 「……寒い…」 私は冷えきった指先に白い息を吹きかける。 こちらに来て数ヵ月、この寒さにだけは慣れることが出来ないでいた。 「お豆腐と野菜に……うん、大丈夫。」 腕にかけた袋の中を確認し、浮き立つ心を落ち着かせる。 今日はあの方と一緒にお夕飯を食べることが出来る。それに─ 「いつぶりでしょうか…、あの方の前で唄うのは。」 頬が紅く染まっているのが自分でも分かる。私は頬に手を当て熱を冷ましながらも、帰路の道を早足で歩き続けた。その時── 「……愛殿…わしは……」 不意に聞こえた悲痛な声。この声は確か…… 私はとっさに物影に隠れる。……私の記憶が正しければこの声は岡田以蔵。でもこの近くには新撰組の屯所があったはずだけど、何故ここにいる!? 私は何通りもの理由を考えながらも、耳は彼が話す言葉へと傾ける。 「……わしは 何を支えに生きればいい…なぁ、愛殿」 ───“愛殿”? 私は記憶を必死で遡り、1人の少女に行き着いた。 『雪原 愛』、新撰組局長の目に止まり新撰組で女中として居候していると聞く少女…、確かあの時岡田を追いかけていたっけ? 「………恋仲ということか? いや、あの方はそのようなことは言ってなかった。」 私は自問自答を繰り返す…が、その答えはすぐに分かった。 「わしの気持ちは…愛殿を愛する気持ちは…いったいどうすれば……うぅ…」 ───なるほどな。 私は物影から顔を出す。岡田以蔵は新撰組屯所前で声を押し殺して泣いていた。 彼女が新撰組にいることを知って結ばれないと理解したということか……くだらない。 「欲しいなら無理矢理にでも奪えばいいのに。」 ぼそりと呟く。私は今までそうやって生きてきた。 ──しかし、これは使えるかもしれない。 ある考えを思いつき、私はついにやりと笑ってしまっていた。
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