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「沖田さん…?」
もしかして寂しいのかな?沖田さんは平気で人を斬るくせに、根は寂しがり屋だから…
私は思わず頬を緩ませながら、そっと沖田さんの手をとる。
「私も寂しいですよ。きっと沖田さんの何倍も…、だから早く帰ってきてくださいね?」
「……敵わないな君には。僕がいなくてもいい子で待ってるんだよ?」
さっきまでの寂しそうな沖田さんは消え、いつもの彼らしい余裕が戻っていた。
「いい子って、私は子どもじゃないです。沖田さんこそ、土方さんに喧嘩を売らずにいい子にしてくださいね?」
私達は暫く睨み合うと、思いきり笑った。こんな楽しげに笑うところを見るのは初めてかもしれないと感じながら。
「よし、そろそろ行くか!!」
和やかな場に近藤さんの力強い声が響く。隊士達はその言葉を待っていたと言わんばかりに大きく返事をした。
「では、お夏さんにお雪さん、お梅さん、雪原君、留守を頼みます。」
「私達の他に屯所に残る隊士さん達もいますし、大丈夫ですよ。気にせず全力を尽くしてきてください。」
胸をはって話すお夏さんは、とても頼もしかった。私達もお夏さんの言葉に頷くと、近藤さんは安心したように笑む。
「すぐ帰るから、待っててくれよな!!」
肩にぽんと手を置き、平助君はにっと笑った。
「心配はするな。」
斎藤さんもいつもと変わらない。だからだろうか、大丈夫だと思える。
「では出立だ!!」
近藤さんの言葉を合図に、隊士達は門をくぐり大阪へ向けて出発した。
「……大阪…土佐浪士…これは何かのきっかけ…」
私は皆の後ろ姿を見送りながらも、お婆ちゃんに聞いた歴史を必死に思い出そうとしていた。
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