人斬り以蔵

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―― ―――― ―――――― 「できたぁぁ!!」 「あら、きれいにできたじゃない!おにぎりは和食じゃないのね。」 お雪さん…、きついっす。あれだよね、人は見かけによらないって本当だよね。 「愛ぃ、あっしの分はないの?もうお腹空いて死にそうなんー。」 「お梅ちゃんの分もあるよ!…ちょっと形が変だけど。」 私は湯気がまだ出ているおにぎりをお梅ちゃんに差し出した。 「しっかし知り合いは大丈夫なんかぁ?飯も作れないほど弱ってはるんやろ?そんな時にこの握り飯食わして、本間に大丈夫なんやろか…。」 「え?お梅ちゃんそっちの心配してんの?」 …そう、私は以蔵さんのためにおにぎりを作っていた。勿論女中の仕事はちゃんとしたし、お夏さん達には知り合いの人が病気で死にかけだからと説明した。 「ほら、これに包みなさい。病人は何を食べさせられても拒否はできないから大丈夫よ。」 ……お夏さんまでそんなこと言うの?まじ泣くよ? 「夕飯の準備はできましたか。」 ふと台所の入り口から声が私達の会話に入ってきた。 「あ、斎藤さん!今、運びますね。」 「じゃあ運びまっか!」 斎藤さんの登場にお梅ちゃんが先頭をきって、出来上がって間もないおかずを広間へと運びだす。それに私も続いて運ぼうとした。 「私も手伝う。重いだろう?」 「え、そんな手伝わすなんて出来ません!斎藤さんは座って待っててくれたらいいんです。」 私はひょいと差し出された斎藤さんの手を避ける。でも斎藤さんはすぐには動かなかった。 「…雪原、私も総司達と同じでお前を守りたいと思っている、いつでも頼りにこい。」 ただそれだけを言い残して、斎藤さんは先に広間に行ってしまった。 「……皆、優しいな。でもね、守るのは私なんだよ。」 そう呟いた私の声は、誰に届くわけでもなく消えていく。そして斎藤さんが行った広間へと私は足を進めた。
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