第一章 珈琲と兎

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季節は冬 辺り一面に広がる雪景色は心浮き立つなんてものではなく、グチャグチャに踏み荒らされた見るにたえないものだった。 俺はその非道い景色を完成形に近付かせながら下校していた。 しがない高校生である俺は今日も学校に通い、何事もなく一日を終えようとしている。 毎日はまるで始めからそこにあったかのように過ぎていく。 17年も生きてりゃ、平凡な日常を覆す一大事が起こる筈もないこと位イヤでも分かる。 でも、いいんだ。平凡結構。 死に直面するような日常なんかオレはいらない。 「それにしても寒いな…」 坂道を下りながら呟いていると 「オッ、」 珈琲ショップを見つけた。 こぢんまりとしているが綺麗な外観で、落ち着いた茶色の壁からとびだした煙突から微かに煙が上がっていた。 こんな所に珈琲ショップがあったか疑問に思ったが、 「まぁ、寒いし。」 店内に足を踏み入れた。
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