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真っ暗な中、何処からか血の匂いがする。
そんな中、ひとり佇む男がいた。
時折吹く風に揺れるのは、短めの逆立った白髪。
顔の上半分は、大きめの黒いゴーグルによって隠れてしまっている。左頬には古い傷痕があった。
ほっそりとしたシルエットだが、決してひ弱な感じはしない。しっかりとした力強さを感じる。
彼は、手にした大きな鎌をブンッと振るった。
そして、呟く。
「あぁ、あかんなぁ」
思ったよりも若い声。
男というよりは、少年と言う方が相応しいかもしれない。
刃に血が付着してるのを見て、少年は眉をしかめた。
ひとつ溜め息を吐き出して、顔を闇の中へと向ける。
「ごめんなさいなんて、言わへんよ?」
少年は暗闇に話かける。
暗闇の中に倒れたひとつのモノに向かって。
「俺は間違ったことはしてへんから。まぁ、それが――」
ニィー。と、口の端がつり上がる。
何かを皮肉るような笑み。
「正しいとも限らへんけどなぁ?」
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