初恋

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「終わりました」  靴磨きを終えた靴を見て、俺は驚く。スニーカーはまるで、新品の状態ではないかと思うほど綺麗になっていたからだ。  ふとピエロ面を見ると早々に道具をバックに入れていた。 「あ、あの、代金は……」 「あ、忘れてました。そうですね……じゃあアナタと彼女がつながったら、夜の空にその報告をしてください。それが代金で良いです。では」  ピエロ面はそう言い、立ち去る。全身が黒ずくめだからか、その姿はまるて闇夜に消えるように消えていく。  俺は咄嗟に叫んだ。 「ありがとうございました!」  俺は、ピエロ面に大事なことを教えてもらった。恋愛において大事なことは、相思相愛。それがなければ付き合うべきではない。  だがそれでも好きならば、許可を取り、一番近くで相手を支える。力になれば良いのだ。そう考えると、告白へと緊張は無くなった。 「……あ、やべっ! 公園に呼び出したままだった!」  ピエロ面から返答は無かったが、届いたと確信した俺はすぐに駆け出した。
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