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嫌われたくないから言いたくない? ピエロ面よりずっと難しい答えに、俺は流石に動揺する。
「ど、どういう意味だよ?」
「そのままの意味だよ……」
泣きそうになる彼女に、俺は困惑を深める。何故彼女がこんなに苦しんでいるのか………まさか、
“愛”が信じられない状況にあるのか?
「真実を知ったらアナタは私を嫌いになるかもしれない! 怖いから……だから言いたくないの!」
「……真実を知らなくて、俺は君を諦めることは出来ない。俺に嫌われたくないなら、お願いだ、教えてくれ」
泣きじゃくる彼女をまっすぐ見据え、俺はそう言う。再び静寂が辺りを覆う。聞こえるのは彼女の嗚咽だけで、時間の経過がいつもの何十倍も遅く感じた。
「……わかった。じゃあ言うよ」
「ごめんな、無理させて」
そんなことないよと彼女は弱々しく笑いながら言い、そして言った。
「私の両親が二人とも不倫してて、離婚しそうなの。私はそんな二人の遺伝子がある……一度は愛した人を簡単に裏切るような遺伝子があるの。
二人を見てるうちに、“愛”っていうのがわからなくなっちゃったの」
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