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「終わりました」
5分経ち、ピエロ面は手を止めた。俺は驚く。どうやったらこんな、新品同然まで綺麗に出来るのか。
「では……」
ピエロ面は早々に道具をバックに入れ、立ち去る。黒づくめだからか、まるで闇夜に消えるように消えた。
「……ちっ、不気味な野郎だ」
なんだか気分が萎えてしまった。俺はサイダーを飲み干しそこらに缶を投げ捨て、自転車にまたがる。
その時、後ろから光が現れる。トラックのライトなのだろう。……いや、おかしい。
明らかに、速い。避けられない。後ろを振り返りトラックを見ると、中は何故か無人。
「なんだよ……これ………」
気付くべきであった。こんな小道に、こんな大きいトラックは不自然。避けられるスペースすらない。
男は成すすべも無く轢かれた。しかも、即死ではなく、普通では即死するほどの重傷で意識があり、一時間ほど苦しんだ後に息耐えた。
その次の日、路上に変死体が発見される。すぐ先に血がつき、凹みのあるトラックが発見されるが、そのトラックはエンジンがずっと昔に壊れている形跡があり、動くはずがないトラックであった。
この、脱獄者の変死事件は迷宮入りし、二度と解明されることはなかった。
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