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すぐ耳元から声がした。振り替えると、俺は見るも怪しい風体の者に包まれていた。
顔はピエロの仮面で見えず、身体は全身黒ずくめ。俺は余りに怪しい雰囲気に一歩退くが、慌てて言った。
「あ、ありがとうございます! 危ないところを……」
「いえいえ。悪いのは私ですよ……」
無関係の人は巻き込むわけにいかないとかブツブツ呟きながら、ピエロ面は一人クスクスと笑う。
命の恩人なのだが、あまりにも不気味すぎる。
「いいですね。初恋……ふむふむ、今から告白しに行くのですか」
「え!?」
何故それを、と聞く暇もなくピエロ面は言う。
「顔に書いてありますよ。“私には好きな人が居る。近々告白する”みたいなね。さっきもじっと考え込み、早足で歩いてましたし、告白しにいくのかと推測してみました」
「……なるほど……」
初対面だと言うのに、このピエロ面、なかなかの観察能力だ。俺はなんだかこのピエロ面に興味を持ってきた。
「どうですか? 告白するには身なりも大事です……靴磨きしましょう」
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