初恋

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「靴磨き……ですか?」  俺は今スニーカーである。故に革靴のように磨き上げるような場所は無いように見えるのだが……。 「はい。私はどんな靴でも磨けますよ。一流の靴磨き職人なのです」 「自分でよくそんなこと言えますね。ならお願いします」  俺はピエロ面の冗談か本当か分からない話を笑い、靴を差し出す。ピエロ面は手に持つ鞄から見たこともない道具、布、ブラシ、スポンジなどを取り出し、さっそく靴磨きを開始した。  ピエロ面は靴磨きをしつつ、話し出す。 「アナタは、“付き合う”ということどういうことだと思いますか?」  深い問いかけだ。俺は少し考え込み、そして答えた。 「お互い心の底から安心し合える、ってことでは?」 「奇遇ですね。私と同じ考えです。では……」  ピエロ面は持ち前の中性的な声で同調し、またもや質問した。 「もしアナタの両親が二人とも浮気している。離婚はすぐそこ。自分は“愛”なんてものが信じられない。そんな状況になったとして、アナタはそれでもその彼女を安心させることが出来ますか?」 「……体験したことがない体験なのでどうとも言えませんが、彼女を安心させることとは別問題です。だから出来ると思います」 「ふふふっ……随分と安易な考えをお持ちなんですね」  ピエロ面は手を止め、腰を上げ、俺に向き直った。
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