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秋も終わりに近づいて
道行く人は皆、前屈みだ。
「すいません。ちょっと尋ねたいのだが」
その中性的な声の主の出で立ちは大変に妙であった。
顔まで隠れる編笠に身体をすっぽり覆ったボロボロのマント。
まるで旅をしている者のようだ。
─…何年も。
声を掛けられた町人の男は怪訝な顔をして振り返った。
「…何だ?」
「京次郎と言う男を探している。
何か知らないだろうか」
途端に男の顔が晴れた。
知り合いだったんだろうか。
「京次郎さんかい!
だったらこの道をまっすぐ行ってだなぁ─…
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