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-居酒屋 すず-
ここは塩屋町にある居酒屋。
夜になると活気も出て来るが、生憎今は昼間。
店の中には仕込みをする女主人が一人いた。
凛とした美しい顔立ちは年齢を感じさせない。
ガラッ
客はまだ来ないはずの時間だ。
女が開いた戸の方を見ると、編笠マントが立っていた。
「お客さん、今はまだ準備中よ?
夜になってからまた来てちょうだいな」
女がそう言うと編笠マントが口を開いた。
「ここに京次郎と言う男がいると聞いて来たのだが…」
「なんだ、京次郎目当てか。
今お使いに行ってんだ。もうすぐ帰って来るよ。
それまでこっちで待っときな。そろそろ外は寒いだろう?」
女はカウンター席を一瞥すると店の奥へ消えてしまった。
ここに座っとけという事だろう。
編笠マントは大人しくその席に腰掛けた。
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