保子という女

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「……ころす…ころしてやるから…ころす…洋ちゃんころすぅ…うぅぅ…」 しばしの沈黙の後で保子は泣き出した。 不幸なことに、押し殺した低い泣き声は、あの日のトドの鳴き声そのもので、ますます保子をトドに近付けた。 「泣いたって無駄だ!今日という今日は俺も覚悟を決めてきたんだ!言いたいことを言わせてもらう!」 「うぅうぅうぅ…」 「ううぅ…!」 保子はTシャツの袖で涙を拭いながらすっくと起き上がると、台所の方へと走り出した。 …こうゆう動作は意外と身軽なんだよな
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