保子という女

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「ころしてやるからぁ!」 保子は俺をにらみ付けている。 …………………… 実はこれも保子の処世術なのだ。 ほとんどの場合泣き叫びながら「死んでやるぅ」なのだが、たまにこの「ころしてやるぅ」が出る。 そして俺は、保子にそんなことをする度胸など無いってことをちゃんと知っている。 だから包丁を向けられても大して驚かなかった。 この後のパターンは決まっている。 保子は俺がなだめるのを待っているのだ。 なだめてもらって、ごねて、また泣いて、俺の方から謝らせて、丸く収める。 保子はそこまで計算しているはずだ。
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