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深夜までには終わると予測した仕事は大幅に期待を裏切り、部屋の時計の短針が今までの二桁から一桁に変化した様子を、溜息交じりで眺める。
どうやら今夜は徹夜になるらしい。
スクアーロとはまだ顔を合わせていないが、数時間前に窓の外に見えた車は彼専用の物だったから、戻っては居るのだろう。
帰っているのなら顔を見せてくれれば良いのに。などと、そういう思考は多少拗くれている自覚はある。ここから出られない缶詰め状態の自分を哀れな位置に置き、それを気遣えと拗ねているだけだ。
なんと幼稚な発想。
ネガティブな思考は間違いなく目の前に積まれた書類のせいで、決して自ら溜め込んだ訳では無く、突発的に持ち込まれた物だから余計にテンションが上がらない。
淀む様な思考と頭、そして長時間の同じ姿勢のせいで凝り固まった身体を解す様に、両手を頭上に上げて軽く伸びをする。心地良い刺激が神経を走るのと同時、くたびれた脳が酸素を求めたのか、大きな欠伸が漏れた。
そんな時に突然ドアが開けば、自分で無くとも驚くだろう。
気持ち良く吐いた息が途中で止まる不快感に眉を寄せながらも、部屋へ入って来た人物に少しだけ驚きながら伸ばしたままだった腕を下ろす。
『随分とのんびりじゃねーかぁ』と、掛けられた言葉に慌てて否定の意味で首を数度左右に振った。さぼっていると思われたのなら心外だ。
「たまたまストレッチしてたんだよ。て言うか、スクアーロ、ノックくらいしろって」
「したぜぇ、ちゃんと」
「…………あ、そうですか…」
言われてしまえば、それ以上は口を噤むしかない。そう言えば欠伸をしている時に小さな音が聞こえた様な気がする。
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