曽上 紀市と利刀 文

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 桜舞う入学式……とはならなかったが、利刀文は柄になく感動していた。  所々落書きがあって、窓ガラスが足りない所もあるが、中学のそれとは比べ物にならない程大きな校舎。そこで青春を謳歌する人々。  これが、自分の思い通りになるのか、と興奮していた。  ここ、恵が丘高校。近隣住民に動物園とまで言わしめたこの不良の巣窟を、文の幼馴染は支配すると言っていたのだ。そして、文の望み通りにしてくれると。  それにつられて、文はこの野獣の巣窟に足を踏み入れたのだ。  文は、馬鹿だった。彼は、物事をすぐ信用するタイプだった。そして、物事を深く考える事をしないのだ。 「紀市! これみんな俺のもんになるんだよな!」  ぱっと隣に目を向けると、どうした事か、頼もしい幼馴染が居ないではないか。はて、と文は首を傾げる。
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