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その言葉を聞いた瞬間
下に俯いていた手越は
勢いよく顔をあげた
「先生!じゃあしげは、
しげは治るんですよね?
すぐに治してなんて言いません
ゆっくりでいいから
それでもいいから、しげを
前みたいに笑うしげに治してください!」
気づけば手越の目からはたくさんの涙が零れていて
欲しいものを買ってもらえなくて駄々をこねてる子供みたいに
泣いていた
メンバーの泣いてる姿を
見る度に胸が苦しくなる
大事な仲間を泣かせてしまって
大事な仲間の笑顔を奪ったのは
俺だから…
泣くなよ。
そう言って慰めてやりたいけどさ
誰のせいだよ、
お前のせいだろ?って
心の中で思ってしまって
俺は泣いてる手越を
ただ見てるだけしかできなかった
「…手越くん、
悪いんだが今の君に私は
話すことはできない…
まず落ち着いてそれから
話を聞くといい。じゃあこの看護師が誘導するのでその部屋にいてください」
そして
手越と看護師の人が
部屋から出て行ったあと
先生は何かがとけたように
大きなため息をつき
手で顔を覆った、
今から聞くことがどんなことか
分からないけど、
いい話じゃないのは分かる
先生もあんな状態の手越を目の前にして話にくかったんだろう
先生の話しを聞いて俺が
しげにしてやれることって
なにかあるのかな
そんなことを考えるほど
なぜかこの時は気持ちに余裕があった、
この時はね…
それから
暫く沈黙が続いて部屋には
秒針の音だけが響いていた
俺も何も喋らずただ先生が話しだすのを黙って待っていると
顔を覆っていた手をどけ
俺の方を見て先生はやっと
口を開いた…
「すみません、貴重な時間をとらせてしまって
…小山くんもなんとなく気づいてると思いますが、良い話ではないということを先に言っておきます
加藤くんの症状は……
治療法がありません
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