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この目でこの耳でしげの笑ってる顔、声を見たい…聞きたいよ…
人ってものがどんだけ尊いものかあんまり考えたことなんてなかった
テレビで流れるニュースでドラマで、色んな場面で人の尊さについて考える機会はあるけど
実際考える人なんて
多分そんなにいない
少なくとも俺は
真剣に考えたことないと思う…
なのにさ、こんなに身近で
こんなに大事な、家族同然な奴のことをきっかけに思い知らされる
なんて…
尊いものなんだって真剣に
考えてたらもしかして
鉄骨が落ちてくるのを防げてた
かもしれないし、
飲み過ぎるといけないから
程々にしようとか色々考えた
かもしれない…
「…俺、何やってんだよ…
くそ… くそっ!くそっ!!…
……俺なんかしげと
出会わなかったら良かったんだ」
部屋の壁を力の限り殴って
脱力した状態で
俺は呟くようにそう言った
「小山さん……
私はそんなことないと思いますよ
小山さんが加藤さんを大事に
思っているように加藤さんだって小山さんを同じくらい大事に
思ってる、だから出会わなければなんて小山さんが言ったの知ったら加藤さんはどう思いますか?
それと確かに治療法はないと
言いました、でもそれは私達医者が加藤さんにたいしてできることがないだけで、小山さんや身内の方々にはまだあるんです」
一瞬言葉を失った
まだ治す方法がある
その言葉は今までで一番
嬉しい言葉だったかもしれない
胸が熱くなるって感じが
どういうことか凄い分かった
嬉しさと驚きで上手く
言葉にできないでいる俺を見て
先生はさっきの深刻な顔とは
違って優しい顔で話しを続けた
「小山さん方にしていただきたいのは、加藤さんとの会話です。
と言っても加藤さんとは会話どころか、小山さん達の声にも反応しないでしょう…
たがら今日あったこと、今思ったことなんでもいいので話しかけて脳に刺激を与えてください
それを続ければいつかは…」
「…それを、続ければ
いつかしげはもとに戻る
そういうことですよね
…しげが俺たちのところに
戻ってくることを信じて、
できるかぎりのことはやってみます!」
一歩前進できたかな...
少しそう思えた瞬間だった
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