402人が本棚に入れています
本棚に追加
山下くんに続いて
小山と手越が出て行って
病室に俺と錦戸くん
それから相変わらず何を
考えているのか、それとも
何も考えていないのか
分からないような目で
しげは外を向いていた、
「…しげ? 何見てんの?
そんな外ばっか見てないでさ
俺と話そうよ……そうそう!
今俺こんなだけどさ怪我治ったら釣り教えてよ!春ってさどんな魚がよく釣れんのかな?秋は秋刀魚だろ夏は」
「増田、もうやめとき
お前も分かってんねやろ?
傷つくのは自分やで…」
そりゃ分かってる、
意味ないことだって…
でも意味ないからって
諦めるのは嫌だ
諦めたらそこで希望も
なにもかもなくなるんだ
だから俺は錦戸君の
言葉を無視した
「…なぁしげ、さっきから
何みてんの?……
おっきい木だね…なんの木だろ ねぇ?しげ…」
しげの目の先には
今まで見たことないくらい
おっきく育ったなんかの木が
立派に立っていた
今は冬だから木には葉っぱも
なにもついてなかったけど
それでも立派だと思える木だった
「俺の病室からも見れるかなぁ
あれって春になったら
何が咲くんだろね?」
俺は独り言のように
しげに問い掛けた
「…あれは、桜の木。」
えっ…
一瞬心臓が飛び跳ねた
今のは、今喋ったのは…
「…しげ……?」
最初のコメントを投稿しよう!