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およそ10分が経過した。
同居人が帰ってくる気配はなく、その間カルマはソファの上でゴロゴロするだけだった。
そんな時
バタンッ
カルマ宅の扉が開けられ、一人の男が息を切らしながら入ってきた。
「カ、カルマ君、いるかい!?」
頭にねじり鉢巻きをつけ、もう冬だというのに半袖のTシャツにエプロンをかけた人物。
それはカルマがよくお世話になる八百屋のおじさんだった。
「……ん、おやっさん、どうかしたんすか?ってか、その格好見てるだけでこっちまで寒くなるからやめてくれねぇ?」
「服装なんてどうでもいいんだ!マザんとこにちょいとガラの悪い奴らがいるんだよ!追い払ってくれないかい?」
マザというのはおじさんの向かいの場所で魚屋をしている人物の名前。
おじさんと共に、名もなき街の名物オヤジとして有名だった。
「……おやっさん、いつもやってるじゃない。わざわざ俺に言いに来なくてもいつもみたいに拳骨して追い出しゃいいじゃないか。」
そう、いつもならオヤジさんお得いの拳骨、通称正義の鉄拳を炸裂させて簡単に決着がつくのだ。
だからこそ、カルマには分からなかった。
なぜオヤジさんが自分の力を必要としているのか。
オヤジさんは自分の言いたいことがうまく伝わらなくて苦悩しながら、話した。
「そいつら、『魔術士』なんだよ!」
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