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だが、この世のどこに無愛想な天使がいるというのだろう。ミシェルは考えを変えた。
たぶん、逆だ。ルシファーのほうが天使と言うに相応しい
。窓の外を見るとオレンジ色の空から赤い色が指していた。ミシェルはそれを見ていてふと思い出すことがあった。
家族が死んだ日のことを。
あの日、友達と遊んで家に帰ると家の中が凄惨な光景になっていた。
血の海ができ、いたるところに家族の体だったものが浮かんでいる。
部屋の中央で黒い影がバリバリと何かを食べていた。影はミシェルに気がつくとゆっくりと振り向く。ミシェルは声にならない叫び声をあげた。
影が持っていたものは大好きな母親の生首だった。影はにたりと笑うと立ち上がる。その時、母親の生首がごとりと落ちた。白い膜の落ちた瞳が無表情にミシェルを見ていた。
ミシェルは恐怖にすくんで動けなくなってしまっていた。逃げようと思ってはいる。しかし体が動かない。完全に恐怖に支配されていた。
「……おかあ…さん」
影の腕がミシェルに伸びたその時!
影が叫び声をあげて後ろにのけぞった。腕は切られている。
ミシェルの前に影が降り立った。黒いマントをはおり、フードをつけている。
「“アヤカシ”か。B級だな」
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