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黒マントはそんなことを呟いていた。ミシェルはそのとき“アヤカシ”という言葉を知ったのである。
黒マントは巨大な鎌を持っていた。いつか子供たちの噂で聞いた。この世には人間ならざるものがいる、と。きっとあの黒マントも影もそうなのだろう。
黒マントは鎌を一閃させる。影が断末魔の声をあげて霧散した。黒マントがミシェルをむく。フードは目深にかぶられ、顔は見えなかった。
「この家の子供か?残念だな。家族を失って」
黒マントはミシェルと目線をあわせた。
「家族の仇を討ちたいのなら、“十字架の狩人”へ来い。俺がお前を強くしてやる」
まぁ、来るかどうかはお前の勝手だがな、と黒マントはいい、ミシェルに金を渡してどこかへ行ってしまった。
そのあとのミシェルは親戚に引き取られて成長したのである。
「誰なんだろう」
あの巨大な鎌、きっとここで“死神”と呼ばれている人なのではないだろうか。
死神はミシェルの知っている限り、髑髏顔で鎌を持っている。長いコートでフードを目深にかぶっているところは同じだが。
「“アヤカシ”って、なんだろう」
よくよく考えてみれば“アヤカシ”の正体をミシェルは知らないのだった。母親から教わった送魂歌を歌うとなぜか“アヤカシ”が救われていくような気がするのだ。だからミシェルは憎みながらも救っている。
今までに倒してきた“アヤカシ”はなにやら悲しい感じがしていた。無理やりに殺しているような、そんな感じが。
階下でカタリと音がした。ルシファーの声が聞こえる。買い物から帰ってきたのだろう。
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