3人が本棚に入れています
本棚に追加
ピチャンと水の落ちる音が響く。岩から滴り落ちた水滴は岩を削り、小さな池を作っていた。池に誰かが踏み入れ、波紋をつくる。
「“アヤカシ”の母よ。話がある」
黒マントを着た男がそう言った。暗闇の奥で何かが動く気配がした。
「なんじゃ、わらわに用か?」
衣擦れの音がし、気配がそばに近づいた。黒マントの口元が笑みの形になる。
「“愛子”発見とのことだ」
「なんと!それは真かや?!」
声は驚いたように響く。声はそのあと、絶望の色を宿していた。
「わらわの子らが嘆いておる。この世からわらわたちが消える日は近いと……どうするのじゃ」
「“死神”と“堕天使”がいるだろう」
「あやつらは頼りにならん。人に感化されておる。そして出来損ないじゃ」
黒マントの前に妖艶な美女が姿を見せた。白い肌と紅を引いた血色の唇。そして艶やかな着物。
「のう、創造主。わらわは夫殿が欲しいのじゃ」
「すぐにS級はつくれないが?」
「つくってくれるじゃろう?」
「それはかまわん」
美女は黒マントに手を伸ばした。フードを取り去ると、漆黒の髪と鋭い目が見えた。美しい男だ。一見すれば女と見まごうほどに美しい。
「本当はお主が夫殿に欲しい」
男は美女の手を煩わしそうぬ振り払った。鋭い光をたたえた目で女をにらみつける。
「死者の夫になるつもりはない。お前は大人しくオレの命令に従っていればいい」
最初のコメントを投稿しよう!