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「アリーシャとレヴィを守るためにならオレはどんなことでもしよう。それが自分の命と引き換えになっても」
もう二度と妹を失ったときのようなことにはしたくない。アリーシャもレヴィも大事な家族なのだから。
が、問題が一つあった。“騎士団”の中で“死神”“堕天使”と呼ばれる二人のことだ。二人とも今は行方がつかめなくなっていた。
そして二人ともシェルの部下でもあった。二人が行方不明になったとき、シェルは危うく最高幹部たちに殺されかけたのだ。が、自分が二人を見つけ出し、処刑するということでやっと許してもらえた。
「たくっ、恩知らずな奴らだ。出来損ないで殺されそうになっていたところを助けてやったというのに」
ブツブツと毒を吐きながら、シェルは家へむかう。途中ですれ違う者達がビクリとしてシェルを振り返る。シェルはそれにも気がつかずに歩いていく。
二人は“アヤカシ”の中でもS級という高位に立つ存在だった。その力ゆえ“狩人”たちのスパイに行かせたのだ。
幹部たちの信頼をその背に受けて。しかし、彼らは出来損ないでもあった。人とアヤカシの血が混ざった彼らは“ハンター”としての力を目覚めさせたのだ。
その連絡が入ってからというもの、彼らはいっさい連絡をよこさなくなった。裏切ったのだ。
「やはりあいつら所詮は出来損ないか」
出来損ないは出来損ない。完全なものにはなれないのだ。
シェルは指をかむ。それがあまりに強かったためか血が流れる。
「だがお前達の利用価値、まだ捨てるわけにはいかないからな。感謝しろ、今はまだ殺さないでおいてやる」
シェルの声に応えるように赤い空に鳥が一羽鳴いた。
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