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ルシファーという名の青年は、頬を膨らませる。ライトは彼をねめつけた。
「試験へ移るが…?」
「危険だって。あの子にけしかけるんだろ?」
「死なないように俺たちがいるんだ」
ライトは丸い水晶を取り出した。中で黒いものがうごめいている。
「“アヤカシ”」
ミシェルの肌があわ立った。
見間違えるはずもない。あの影は家族を殺したものだ。
「いけ」
ライトが水晶を下に落とす。水晶はライトの手を離れると空中で割れる。中から黒い影が出てきた。
「B級なんて苦しいんじゃないの?」
ルシファーはライトにたずねる。ライトは小さく鼻を鳴らした。
「関係ない。ただそれがあたっただけだ」
ルシファーは心配そうにミシェルのほうを見る。
影がだんだんと体をつくっていく。やがてそれは巨大な獣になった。体は半分融けかかっている。
ただ金色の双眸だけは形を成し、ギラギラとミシェルを狙って輝いていた。
「“風よ 我に味方し万物の粒子 我の命を聞き届け 闇より現れし 禍々しきなるものをここに滅せよっ!”」
ミシェルの周りに風が生まれる。ルシファーとライトの目が見開かれた。
風は意思を持つが如く、獣へ向かっていく。
獣のほうも迎え撃とうとしたが、風に切り刻まれ断末魔の叫びをあげ瞬時に消滅した。
風は獣が消滅すると同時にやんだ。
「すごい」
ルシファーはぽそりと呟く。ライトは門から飛び降りた。慌ててルシファーも後に続く。二人ともミシェルより頭一つ分は高かった。
「合格だ。お前の名は?」
「ミシェル・ファグナ・ジュリス」
「誰かの薦めできたのか?」
「いいえ。小さい頃に出会った人に助けてもらったのよ。その人との約束なの」
ライトの目が細められる。ルシファーが短く口笛を吹く。
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