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「ここだ」
ライトは数多くある部屋のうちのひとつへミシェルを連れて行った。部屋の入り口に“第三修練場”と書かれた看板が打ちつけられている。
ミシェルはライトを見上げた。ライトはミシェルを見下ろし、短く入れ、と言っただけだった。
ミシェルは戸に手をかけ、ノブをまわす。小さくきぃっと音がして戸はあいた。
中をのぞくと真っ暗闇だった。ぞくりと背筋があわ立つ。中にはあれがいる。息遣いも今まさにミシェルを食いちぎろうとするその気配までしてくるのだ。
背後でライトが息を呑んだ。
「レベルA?!いくらなんでも無理だ!」
「私やる。やらなきゃ入れないんでしょ」
「お前、死ぬかも知れないんだぞ」
ミシェルはライトの脅しに乗らず、笑った。ライトは少しばかり呆けた。
「大丈夫。私は戦うためにここにきたんだもの。むざむざ死なないわ」
ライトは少し信じることに決めた。ミシェルの力は先ほど確認済みだからだ。
ライトは軽くミシェルの背を押す。ミシェルはライトを見上げた。
「死にかけたら俺が手を出す」
「必要ないもん」
「そうなるといいがな」
ミシェルは部屋の中へ入っていく。それと同時に左右から触手が伸びてくる。
ミシェルは上に飛び上がり、攻撃をかわす。しかし触手はなおもしつこく追ってくる。
「“風よ 不可視の刃となりて 悪しきものを 切り刻め”」
ミシェルの言葉が風を生み、触手を切り裂く。耳を覆いたくなるほどの咆哮が闇からあがった。
ミシェルが地におり、闇にむかって手を差し出す。
「“主よ 闇に捕らわれし魂 今御身の御許に”」
小さな竜巻ができたかと思うと、巨大な竜巻へ一気に成長し闇へ入っていく。
断末魔の咆哮が消えるとミシェルの体がフラリとかしぐ。地面に打ち付けられる寸前でライトが体を抱きとめた。
「ミシェル、大丈夫か?」
「う」
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