緑江最登は平凡に暮らしたい

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彼が再び目を開けるても、壇上では相変わらず校長が話を続けていた。 体育館に掛けてある時計で、時間を確認してみると意識を失ってから、約10分は経過していた。 ―一体いつまで話をするつもりなんだ。長々と話すんなら、大佐並の演説を聞かせてくれ。抑揚のない、平坦な話なんて聞いても苦しいだけだぞ。もう少し生徒の立場になってみようよ、ホント 彼のそんな思いを嘲笑うかのように、校長の話は続き、更に10分後、ようやく終わりを迎えた。 しかし、無情である。 司会進行役の教頭の口から、次なる強敵の入場のコールがされた。 『新入生代表の挨拶』 ―しまったなぁ…まだコイツが居たのか。校長の話よか早く終わるけど、ただの意味の分からん言葉の羅列だからなぁ…睡魔との戦いは熾烈なモノとなるだろうなぁ…絶対に負ける 負けを前提に挑む戦いを前に、早くもサレンダー気味に目を閉じていたが、その時、ふと少しだけ気になる事が緑江の脳裏を過ぎった。 ―代表って確か、入試と内申点を総合的に見て、1番成績が良かった生徒がなるもんだったよな。少しだけ、ほんの少しだけ、どんなヤツなのか気になるな。 緑江は視線を上げて、これから名前を呼ばれ、立ち上がる人間を確認するべく、目を半開きにした。 「新入生代表、鮎川みなもさん」 「はい!!」 元気のよい、ハキハキとした声が体育館中に響き渡った。と同時に、前方の席から少女が立ち上がった。位置からして、どうやら同じクラスの女子の様だ。彼女は綺麗に整った歩みで壇上へ上がる階段に向かって行く。 瞬間、緑江に電流、走る。 正直、緑江は何にも大それた期待などしていなかったのである。ただ、『この学校で1番に入って来た人間はどんなもんなのか?』と言う本当に、本当に小さな小さな疑問しか持っていなかった。 そんな軽い気持ちだったからであろうか、もしくは彼女が本物だったからであろうか、緑江は彼女に見取れてしまった。彼女の容姿端麗さに緑江は目線を全て奪われた。 綺麗と言うよりは可愛く、肩まで伸びた黒髪、スラッと伸びた足、細いウエスト、普通より小さい胸。 小さな胸は残念だが、彼女は間違いなく、この学校のアイドルとして、囃し立てられるだろう。 ―才色兼備とは正にこの事。天は二物を与えるね。不平等にも程がある。しっかし… 緑江は彼女の響き渡る挨拶の中、思った。 ―違法パーツみたいな名前…
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