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「くっ!」
ヴァンはとっさに両手を交差し、天空竜聖をまとった腕でレイの魔槍を受け止める。
だが、やはりレイの魔槍は確実に天空竜聖を削り取って行く。
完璧攻撃力と防御力を誇る天空竜聖の光の鎧だというのに、レイの前では無意味と化す。
ヴァンは慌てて槍を受け流し、生身の身体に槍が振れる前に、魔槍を流しきった。
だが、それを読んでいたレイが握りしめた拳を思い切りヴァンに放つ。
本来ならば、天空竜聖を纏っているヴァンに物理攻撃など意味がない。
だが。
ドォン!!
「がっ!!」
漆黒の魔力を帯びたレイの拳は、ヴァンの天空竜聖を貫通して確実に腹部に打撃を与えていた。
「ぐっ!!」
痛みに気が振れそうになりながらも、ヴァンは無理矢理吹き飛ぶ体を空中で立て直した。
「がはっごほっ」
咽る中、視線だけはレイから外さないヴァン。
(あの黒い魔力…。天空竜聖を貫通してきましたね…。
魔力無効化系の能力?いや、だとすれば天空竜聖そのものが消え去るはず。
そもそも魔力が消された感じはしなかった…。ということは)
「気づいたようだな、ヴァンよ」
地上から見上げるレイがニヤリと笑みを浮かべる。
「えぇ。魔王特有のその黒い力。効力は『一点突破』ですね?」
ヴァンの言葉に満足したのか、レイは小さく口元を緩める。
それは無言による肯定であった。
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