紅茶派の陽菜と、コーヒー派の凛と、緑茶派のイブキ。

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心の傷に塩を塗り込まれた雅人が救いを求めるように前を向くと、正面に座るイブキが話しかけてきた。 「御主人様は、いつも紅茶を飲んでおりますが、お茶は嫌いですか?」 唐突な質問。 「嫌いってわけじゃないよ。でも、紅茶のほうが好き」 「そうですか」 何かを思案するように言葉を切る。 「私は、以前茶道の稽古も受けて参りました」 「へぇ、イブキさんに茶道……着物……和室……うん、似合いそうですね」 「ですから、今度本家に帰ったときにでも、道具があれば本格的なものがご用意できるかと」 「そうなんですか? それはぜひ! お願いします!」 答えた瞬間、雅人からは、イブキの目がいつもより大きく開いて輝いたように見えた。 「畏まりました」 イブキは表情は崩さずに、しかしどこか満足げに頷いた。
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